むちうちで後遺症認定を得るポイントとは? 難しい理由や対処法を解説
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八王子市が公表している交通事故発生状況に関する統計によると、令和5年中に八王子市内で発生した交通事故件数は1394件で、軽症者は1541人となっています。
交通事故の軽症とされる怪我でもっとも多いのは「むちうち」と言われています。事故のより首に急激な衝撃が加わると、首や背中などに痛みが出ることがありますが、これがむちうちです。
交通事故による怪我を治療しても治療しても完全に治らず、後遺症認定(後遺障害等級認定)を受けた場合、賠償金を請求することができます。しかし、むちうちは医師が客観的に診断しづらいため、簡単には後遺症認定を受けることはできません。「つらい自覚症状があるのに、後遺症として認められない……」という状況を避けるためにも、後遺症認定のポイントをしっかりと押さえておきましょう。
今回は、むちうちの後遺症認定が難しい理由と後遺症認定をとるポイントについて、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。


1、むちうちで後遺症認定(後遺障害等級認定)を受けられる?
むちうちで後遺症認定を受けることはできるのでしょうか。以下では、むちうちの症状や後遺障害の認定に関する基本をみていきましょう。
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(1)むちうちとはどのような症状?
むちうちとは、交通事故により首に急激な衝撃が加わることにより引き起こされる症状の総称です。首がムチのようにしなることで発症することから「むちうち」と呼ばれています。
むちうちの正式な医学的な名称は、「外傷性頚部(けいぶ)症候群」や「頚椎(けいつい)捻挫」などです。
むちうちの具体的な症状には、以下のようなものがあります。- 首、肩、腕、背中などが痛い
- 首が回らない、動かすと痛い
- 肩甲骨や背骨の周辺が痛い
- 頭痛、頭がぼんやりする
- 倦怠(けんたい)感、疲労感がある
- 吐き気、嘔吐(おうと)、めまいがする
- 手足などにしびれがある
- 物を掴みにくい感じがする
- 耳鳴りがする
- 事故後から眠りが浅い、眠れない
事故直後は緊張や興奮状態にあるため、むちうちの症状を感じないことがありますが、数時間後または翌日以降に徐々に症状があらわれるので、事故後は早めに病院を受診するようにしましょう。
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(2)後遺障害の認定とは?
交通事故による治療を継続しても症状が完治せず、これ以上治療を継続しても症状の改善が期待できない状態になることがあります。これを「症状固定」といい、症状固定時に存在する後遺症は、申請をすることにより症状に応じた後遺障害等級認定を受けることができます。
後遺障害等級認定が受けられると、交通事故による損害として後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができるようになります。
事故後の精神的・身体的苦痛や、働けなくなった期間の経済的負担をできるだけ少なくするためにも、後遺障害等級認定が受けられるかどうかは重要なポイントです。 -
(3)むちうちの後遺障害等級は何級?
むちうちによる後遺症が生じた場合も後遺障害等級を申請することができます。むちうちにより認定される可能性のある後遺障害等級は、以下の2つです。
① 12級13号|局部に頑固な神経症状を残すもの
12級13号は、画像所見や神経学的検査結果などの客観的なデータや診断(他覚的所見)によって症状が医学的に証明できる場合に認定されます。
② 14級9号|局部に神経症状を残すもの
14級9号は、事故にあったときの状態・治療の経過などから症状の連続性・一貫性が認められ、説明可能な症状であり、単なる故意の誇張でないと医学的に推定される場合に認定されます。
むちうちの場合、CTスキャンやレントゲンなどの他覚的所見が認められるケースは少ないため、後遺症認定をされたとしても、主に14級9号になることが多いです。
2、むちうちの後遺症認定(後遺障害等級認定)が難しい理由とは?
むちうちの後遺症認定は難しいといわれることがあります。それにはどのような理由があるのでしょうか。以下では、むちうちの後遺症認定が難しい理由について説明します。
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(1)自覚症状だけでは後遺症として認定されにくいから
むちうちの後遺障害等級認定が難しいといわれる理由は、交通事故によるむちうちで首の痛みなどの症状が残っていたとしても、症状の原因がCTスキャンやレントゲンに写らないため、客観的に後遺症があることを証明するのが難しいからです。
もっとも、後遺障害等級14級9号の認定基準では、他覚的所見があることまでは要求されていないので、患者本人の自覚症状しか症状を裏付けるものがなかったとしても、あきらめる必要はありません。ポイントを押さえて後遺障害等級申請をすることで、難しいといわれるむちうちの後遺症認定でも認められる可能性があります。 -
(2)医師が後遺障害診断書を書いてくれないから
後遺症認定の手続きは、基本的には書面審査になるので、医師が作成する「後遺障害診断書」の内容が重要になります。
医師は、怪我の治療に関する専門家ですが、後遺障害診断書の作成に関しては不慣れな方も少なくありません。医師に後遺障害診断書の作成を依頼しても、面倒な手続きに巻き込まれたくないなどの理由から作成を拒否されてしまったり、診断書の記載内容に漏れや不適切な記載があったりすると後遺症認定は難しいといえます。 -
(3)事故との因果関係が必要だから
むちうちで後遺症認定を受けるには、事故とむちうちとの間に因果関係が必要です。
低速度で追突され、車両にもわずかな傷しか残っていないような軽微な事故態様だと、むちうちの症状が残っていたとしても、事故との因果関係が否定されてしまい、後遺症認定が受けられないことがあります。
また、途中で治療を中断してしまい、適切な頻度で通院をしていないような場合には、事故との因果関係が否定され、後遺症認定が受けられない可能性があります。
お問い合わせください。
3、むちうちで後遺症認定(後遺障害等級認定)されるポイントとは?
むちうちで後遺症認定を獲得するには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
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(1)認定基準を満たしていること
後遺障害等級ごとに認定基準が設けられており、その基準を満たしていなければ後遺症認定を受けることはできません。先述のとおり、むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級は、12級13号または14級9号であり、それぞれの認定基準は以下のようになっています。
障害等級 認定基準 12級13号
(局部に頑固な神経症状を残すもの)画像所見や神経学的検査結果などの他覚的所見によって症状が医学的に証明できること 14級9号
(局部に神経症状を残すもの)受傷時の状態・治療経過などから症状の連続性・一貫性が認められ、説明可能な症状であり、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されること
12級13号と14級9号の違いは、他覚的所見の有無です。
むちうちの多くがCTスキャンやレントゲンなどの画像による他覚的所見がないものになるので、14級9号の獲得を目指していくケースが多いでしょう。 -
(2)定期的に通院していること
後遺症認定にあたっては、通院回数、通院期間、通院頻度なども考慮されます。
通院回数や通院期間があまりにも少ない場合、後遺症が生じるような怪我ではなかったと判断されてしまいます。そのため、自分の判断で勝手に治療をやめるようなことをせず、医師から症状固定と診断されるまでしっかりと通院しましょう。
また、むちうちの治療にあたって整形外科以外にも整骨院を利用する方もいますが、後遺症認定を受けるには病院(整形外科)への通院が重要になります。整骨院を利用する場合でも、必ず病院へ定期的に通い、医師に事故後の経過を診察してもらいましょう。 -
(3)症状に一貫性・連続性があること
むちうちは、他覚的所見がなく自覚症状がメインになるため、本当にむちうちによる症状が残っているかどうかを判断する際には、症状の一貫性・連続性が重要な考慮要素となります。
一貫性とは、むちうちの症状が同じ部位にあらわれていることです。受診するたびに、痛みの場所が変わるような説明をした場合、一貫性があるとは認められません。
また、連続性とは、事故から症状固定まで症状が連続していることをいいます。受診の際に痛みがなくなったり、あらわれたりするなどの説明をすると連続性が否定される可能性があるため、注意が必要です。
たとえば、「雨の日だけ痛む」「寒い季節だけ症状がでる」といった場合は症状の連続性がないとされる可能性があります。
4、交通事故に関する悩みは弁護士に相談を
後遺症がつらく相手方に賠償金を請求したい場合など、交通事故に関するお悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)通院頻度のアドバイスを受けられる
事故直後から弁護士に相談をすれば、今後の後遺症認定を見越して、通院頻度や通院回数などのアドバイスが受けられます。適切な頻度や回数で通院を継続することにより、認定の可能性を高めることができるので、早い段階から弁護士に相談するようにしましょう。
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(2)医師の診断書をチェックしてもらえる
医師は、後遺症認定を受けるための後遺障害診断書の記載方法を熟知しているわけではないので、医師が記載した後遺障害診断書でも内容に不備があることがあります。
後遺障害等級申請の前に弁護士が診断書の内容をチェックし、不備・不足があるようであれば追加の記載を求めていくことが可能です。後遺障害診断書は、後遺症認定にあたって重要な書類になるため、適切な後遺障害等級認定を受けるためにも不備のない診断書の作成が求められます。 -
(3)認定されない場合でも不服申し立てをしてもらえる
後遺障害等級申請の結果が「非該当」であったとしてもあきらめる必要はありません。
非該当になった理由を分析して、それを補う追加書類を提出して異議申し立てをすることにより非該当の結果を覆せる可能性があります。
非該当の理由の分析や追加書類の収集にあたっては、専門的な知識と経験が不可欠となるため、弁護士によるサポートが必要です。 -
(4)示談交渉なども対応してもらえる
むちうちによる後遺症認定が受けられたら、それに基づいて保険会社と示談交渉を進めていきます。
しかし、保険会社から提示される賠償額は、相場よりも低い金額であることが多く、そのまま示談をしてしまうと不当に低い金額しかもらえないおそれがあります。弁護士に依頼すれば、保険会社との示談交渉にも対応してもらえるので、適正な賠償金を獲得できる可能性が高くなります。 -
(5)慰謝料を増額できる可能性がある
交通事故の慰謝料の算定基準には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
このうち慰謝料額がもっとも高額になるのは、裁判所基準で計算した場合になりますが、裁判所基準を用いて示談交渉をするには弁護士への依頼が不可欠です。弁護士に示談交渉を依頼することで、保険会社が提示した賠償額を増額できる可能性があります。
5、まとめ
交通事故によるむちうちで後遺症が生じたときは、後遺症認定の手続きを行う必要があります。むちうちによる後遺症認定は難しいといわれることが多いですが、しっかりとポイントを押さえて申請をすることにより、後遺症認定の可能性を高めることができます。
交通事故の被害者になりむちうちにより後遺症が生じた方は、適切なサポートが重要になりますので、まずはベリーベスト法律事務所 八王子オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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