遺留分を自分で請求する方法は? 遺留分侵害額請求の手順、注意点

2024年10月17日
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遺留分を自分で請求する方法は? 遺留分侵害額請求の手順、注意点

特定の相続人にすべての遺産を相続させるような内容の遺言書が残されていた場合、不公平な遺産相続だと不満を感じる方は少なくないでしょう。

このような場合、一定の相続人は、遺留分侵害額請求により侵害された遺留分に相当する金銭を取り戻す権利が認められています。

では、遺留分侵害額請求は、弁護士に依頼することなく自分で請求することはできるのでしょうか。また、遺留分侵害額請求は、どのような手順・流れで行っていけばよいのでしょうか。

今回は、遺留分侵害額請求を自分で行う場合の手順と注意点について、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。


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1、遺留分とは|相続人の範囲や割合など

そもそも遺留分とはどのような制度なのでしょうか。以下では、遺留分に関する基本事項を説明します。

  1. (1)遺留分とは

    遺留分とは、法律により認められている相続人の最低限の遺産の取得割合のことをいいます。

    被相続人が遺留分を侵害するような内容の遺言書を作成することも、法律上は有効とされています。しかし、それでは相続人間で大きな不公平が発生してしまいます。そこで、最低限の遺産の取得割合として遺留分を定めることで、相続人の生活を保障しようとしたのです。これが遺留分の制度です。

  2. (2)遺留分が認められる相続人の範囲

    遺留分は、すべての相続人に認められているわけではありません。遺留分制度の目的が、相続人の遺産相続への期待の保護と生活の保障にあることから、遺留分が認められる相続人は、以下の範囲に限定されています

    • 被相続人の配偶者
    • 被相続人の子ども(子どもが先に亡くなっている場合には孫)
    • 被相続人の両親(両親が先に亡くなっている場合には祖父母)


    なお、被相続人の兄弟姉妹や甥姪については、遺留分が認められていませんので注意が必要です。

  3. (3)遺留分の割合

    遺留分の割合は、誰が相続人になるかによって、以下のように変わります。

    • 父母などの直系尊属のみが相続人になるケース:法定相続分×3分の1
    • それ以外のケース:法定相続分×2分の1


    たとえば、被相続人が死亡して、被相続人の配偶者、長男、次男が相続人になる場合において、長男にすべての遺産を相続させる旨の遺言があったとします。この場合、配偶者と次男の遺留分が侵害されていますので、各相続人の個別的遺留分は、以下のようになります。

    • 配偶者:4分の1(※上記のケースの配偶者の法定相続分は2分の1)
    • 次男:8分の1(※上記のケースの次男の法定相続分は4分の1)

2、遺留分は自分で請求できるの?

遺言書により遺留分が侵害されていた場合、自分で遺留分の取り戻しを請求することができるのでしょうか。

  1. (1)遺留分は自分で請求することも可能!

    遺留分の請求となると弁護士に依頼しなければできないと考える方も多いと思います。しかし、自分で遺留分を請求することも可能です。

    法律上、遺留分の請求を弁護士に依頼しなければならないという決まりはありませんので、自分で対応できるのであれば自分で請求しても問題ありません。

    ただし、自分で遺留分の請求をするにあたっては、メリットだけでなくデメリットもあります。次項で詳しく説明するので、それを踏まえて、本当に自分だけで対応できるのかを慎重に判断することが大切です。

  2. (2)遺留分を自分で請求するメリット・デメリット

    遺留分を自分で請求することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

    ① メリット
    遺留分を自分で請求すれば、弁護士費用を節約することができます。金銭的な余裕がない場合には、自分で請求することも選択肢のひとつになるでしょう。

    ② デメリット
    遺留分の計算は非常に複雑な計算になります。そのため、法的知識がない方だと計算ミスなどが原因で本来もらえる額よりも少ない額しかもらえないリスクがあります
    また、遺留分の請求には期限がありますが、不慣れだと期限を過ぎてしまい、遺留分を請求する権利を失ってしまうリスクもあります。


    このように、遺留分は自分で請求できるとはいっても、相続に関する知識や経験がない場合、適切に請求を行うことは難しいといえます。正しく請求できるか不安がある場合は、相続問題の実績がある弁護士に相談・依頼した方がよいでしょう

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3、遺留分侵害額請求の手順と流れ

遺留分が侵害されていた場合、遺留分侵害額請求を行う必要があります。以下では、遺留分侵害額請求の手順と流れを説明します。

  1. (1)遺留分侵害額請求とは

    遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が遺留分を侵害した相続人に対して、侵害された遺留分に相当する金銭を請求することをいいます。

    遺留分侵害額請求の方法には、特別な要式があるわけではありませんが、遺留分権利者からの意思表示が必要になりますので、遺留分が侵害されていることがわかったら、そのまま放置するのではなく、必ず遺留分を請求する意思表示を行ってください。

    なお、遺留分侵害額請求は、以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、2019年(令和元年)施行の改正民法により現在の名称に変更になりました。遺留分減殺請求では、不動産などの現物を返還するのが原則とされていましたが、遺留分侵害額請求では、金銭請求になっている点も大きな変更点です。

  2. (2)遺留分侵害額請求の流れ

    遺留分侵害額請求は、以下のような流れで行います。

    ① 相続人との話し合い
    遺留分の侵害が明らかになったら、まずは遺留分を侵害した相続人と話し合いを行い、侵害された遺留分に相当する金銭を支払ってもらうよう求めていきます。

    お金に関する話し合いになりますので、遺留分権利者の側でしっかりと根拠を示しながら説明をすることが大切です。話し合いにより合意が得られたときは、必ず合意書などの書面を作成しておきましょう

    ② 遺留分侵害額の請求調停の申立て
    当事者同士の話し合いで解決しないときは、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停の申立てを行います。遺留分に関する争いについては、調停前置主義が採用されていますので、いきなり裁判を起こすことは原則としてできず、まずは調停の申立てが必要になります

    調停も基本的には話し合いの手続きですが、調停委員という第三者が間に入ってくれますので、スムーズな話し合いが期待できます。調停によりお互いの合意が成立すれば、調停成立となり、合意内容は調停調書にまとめられます。他方、合意が得られなときは調停不成立となります。

    ③ 遺留分侵害額請求訴訟の提起
    調停で話し合いがまとまらず不成立になったときは、地方裁判所または簡易裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起する必要があります。

    訴訟は専門的な手続きも多く、自分では対応が難しいケースも少なくありません。そのため、訴訟対応については弁護士に任せるのがおすすめです。

4、遺留分侵害額請求する際の注意点

遺留分侵害額請求をする際には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)遺留分侵害額請求には時効と除斥期間がある

    遺留分侵害額請求は、相続開始および遺留分侵害を知ったときから1年以内に行わなければなりません。また、相続開始や遺留分侵害を知らなかったとしても、相続開始から10年を経過すると(「除斥期間」といいます。)、遺留分侵害額請求を行うことができなくなります。

    1年という期間は、あっという間に過ぎてしまいますので、遺言などにより遺留分が侵害されていることがわかったら、すぐに行動することが重要です

  2. (2)内容証明郵便を利用して請求する

    遺留分侵害額請求の時効期間内に、遺留分を請求する意思表示をすれば、遺留分の時効に関する問題はクリアします。

    遺留分を請求する方法については、法律上特別の要式が定められているわけではありませんが、意思表示を行ったという事実を明確に残すためにも内容証明郵便を利用して行うのがおすすめです。いつ遺留分侵害額請求を行ったのかは、実務でもよく問題になりますので、内容証明郵便を利用するのが一般的です

  3. (3)遺留分を受け取ったときに相続税が発生する可能性がある

    被相続人の遺産総額が相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×相続人の数)を超える場合には、相続税の申告が必要になります。

    遺留分を侵害するような遺言が残されていた場合には、遺留分を侵害された相続人は、取得する遺産がないことを前提に相続税の申告をすればよいため、相続税の負担はほとんどありません。しかし、遺留分侵害額請求により遺留分に相当する金銭の支払いを受けた場合には、修正申告が必要になりますので、取得した金額によっては相続税の支払いが必要になる可能性もあります。

5、遺留分侵害額請求を弁護士に相談するメリット

遺留分侵害額請求をお考えの方は、自分で対応するのではなく、まずは弁護士に相談するのがおすすめです

  1. (1)正確に遺留分の侵害額を計算することができる

    遺留分を計算するためには、相続開始時における相続財産、生前贈与した財産、相続債務を把握していなければなりません。そのためには、正確な相続財産調査が必要になりますが、知識や経験がなければ適切に行うのは難しいといえるでしょう。

    遺産相続の実績がある弁護士であれば、遺留分の計算法やその前提となる相続財産調査の方法を熟知していますので、迅速かつ正確に遺留分の金額を計算することが可能です。

  2. (2)時効により権利を失うリスクがない

    自分で遺留分を請求すると、時効期間の経過により権利を失ってしまうリスクがあります。

    しかし、弁護士であれば、依頼を受けた時点で時効が完成していない事案であれば、適切に時効期間を管理して、時効期間が経過する前に遺留分侵害額請求を行うことが可能です。遺留分侵害額請求には、相続開始および遺留分侵害を知ったときから1年という非常に短い期間制限が設けられていますので、弁護士に対応を任せた方が安心といえます。

  3. (3)他の相続人と代わりに交渉してくれる

    遺留分侵害額請求では、まずは他の相続人との話し合いが必要になります。

    しかし、相続人同士の関係性によっては、直接話し合いをすると、対立が深まってしまったり、そもそも交渉が難しかったりするケースも少なくありません。

    弁護士に依頼すれば、他の相続人との交渉をすべて一任することができます。そのため、交渉に関する精神的・時間的負担が大きく軽減されるでしょう。また、交渉が決裂したとしても、調停や裁判の手続きも任せることができます。

6、まとめ

遺留分の請求は自分でも可能ですが、内容証明郵便で請求したり、家庭裁判所に調停を申し立てたりしなければならないなど、経験のない方では非常に負担が大きい手続きです。

万が一、遺留分侵害額請求でミスがあれば、本来もらえる金額よりも少なくなってしまったり、大切な権利が時効や除斥期間の経過により失われてしまったりするリスクもあります。

弁護士は、法定相続人との交渉や煩雑な手続きをサポートし、適切に遺留分侵害額請求を行います。まずは、相続問題の解決実績があるベリーベスト法律事務所 八王子オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています