遺留分を請求されたら|確認すべきことと請求を受けたあとの流れ

2024年08月29日
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遺留分を請求されたら|確認すべきことと請求を受けたあとの流れ

八王子市が公表している人口の増減について、令和4年の八王子市の死亡者数は、6523件と、過去最多となっており、相続は非常に身近な問題となっています。

ご家族が亡くなり、他の相続人から遺留分の請求を受けた場合、どうすればいいのでしょうか。遺産は自分が受け継ぐことになっているため、このような請求は無視しておいてもよいのでしょうか。また、生前亡くなった方から一部財産を譲り受けていたことを、他の相続人から指摘されているような場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

本コラムでは、遺留分の概要や遺留分が認められるケース、遺留分侵害額請求をされた場合に確認すべきこと、具体的な対応方法などについて、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士がわかりやすく解説していきます。


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1、遺留分とは? 法的な定義と認められている割合

そもそも、遺留分とはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、遺留分の概要や遺留分を請求できる人、遺留分の割合などについて解説していきます。

  1. (1)遺留分の概要

    まず、遺留分とは、一定の相続人のために法律上必ず保障されている相続財産の取り分のことをいいます。

    原則として亡くなった方は、生前に有していた財産については、ご自身の死後に自由に処分することができます。しかし、そのような自由な処分を認めた場合、被相続人の財産に依存して生活してきた子どもや配偶者の生活の保障が失われかねません。さらに、被相続人の財産形成に寄与・貢献した相続人に、実質的な共有持分を確保できないという不都合が発生してしまいます。被相続人の財産形成に寄与・貢献した相続人とは、被相続人の事業や家業を無償で手伝ったり、被相続人の介護に専念した方を指します。

    そこで、被相続人の遺言による意思によっても奪うことができない、「一定範囲の財産」を「一定範囲の相続人」に保障したものが遺留分なのです。

    なお、遺留分を請求できるのは、全ての相続人ではありません。遺留分を請求することができるのは、以下の相続人です(民法第1042条第1項)。

    • 被相続人の子ども(または、その代襲相続人)
    • 被相続人の直系尊属(父母・祖父母など)
    • 被相続人の配偶者


    したがって、被相続人の兄弟姉妹には遺留分を請求することはできません。

  2. (2)遺留分の割合

    遺留分の割合については、総体的遺留分と個別的遺留分によって把握する必要があります。
    総体的遺留分とは、遺留分権利者である共同相続人の全体が有する遺留分ですこれに対して、個別的遺留分とは、相続人が個別的に有する遺留分のことをいいます

    総体的遺留分については、以下のように規定されています(民法第1042条 第1項)。

    • 直系尊属のみが相続人である場合:3分の1
    • 上記以外の場合:2分の1


    相続人が複数人いる場合には、法定相続人に上記の割合を掛け合わせることで個別的遺留分を算出することになります。

    以下では、具体例を挙げて説明いたします。

    【事例】父、母、長男、次男の4人家族で、父親が死亡したケース
    相続人となるのは、被相続人の配偶者である母と、その子である長男と次男の3人です。

    この場合、「直系尊属のみが相続人である場合」にはあたりませんので、総体的遺留分は全体の2分の1となります。

    次に、各相続人の個別的遺留分については、次のようになります。
    母…「総体的遺留分1/2×法定相続人1/2=個別的遺留分1/4」
    長男および次男…「総体的遺留分1/2×法定相続分1/4=個別的遺留分1/8」

    したがって、母の遺留分の割合は「4分の1」、長男・次男の遺留分はそれぞれ「8分の1」となります。
  3. (3)遺留分が適用されるケース

    遺留分の対象となる財産は、次の2つです

    • ① 被相続人が相続開始の時において有した財産
    • ② 贈与した財産(生前贈与)


    ① 被相続人が相続開始の時において有した財産
    相続開始の時において有した財産には、遺贈される財産を含む以下のような積極財産を指します。

    • 現金、預貯金
    • 土地や建物などの不動産
    • 自動車
    • 株式や投資信託
    • 家具家電、貴金属
    など


    ② 贈与した財産(生前贈与)
    贈与した財産について、相続開始前の1年間になされたものについては、無条件で遺留分算定のための基礎の財産に参入されます。
    ただし、相続開始の1年以上前になされた贈与であっても、贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与については、遺留分算定の基礎となる財産に算入されます(民法第1044条 第1項)。

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2、遺留分侵害額請求をされたときに確認すべきこと

それでは、一部の相続人から遺留分侵害額請求をされた場合はどうすればいいのでしょうか。ここでは、遺留分侵害額請求をされた場合に確認すべきことを解説していきます。

  1. (1)請求された内容が正当なものか

    一部の相続人から遺留分侵害額請求をされた場合、請求してきた相手が、そもそも遺留分を請求できる権利を持っているかどうかを確認する必要があります。

    前述のとおり、遺留分は一定の法定相続人にのみ認められている権利です。遺留分を請求してきた相手が、その一定の法定相続人に該当しているのかどうかを確認しましょう。

    遺留分権利者となることができるのは、「被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人」です。被相続人の兄弟姉妹は遺留分権利者になれません。被相続人に配偶者、子ども、親がいない場合、被相続人の兄弟姉妹は法定相続人になることはできますが、遺留分権利者にはなれません。

    また、「被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人」であっても、相続欠格や相続廃除によって相続の権利がはく奪されている場合には、遺留分権利者になれません。
    さらに、相続放棄をした法定相続人や、遺留分の放棄をした相続人も、遺留分権利者になることはできません。

    そのうえで、請求の相手が遺留分権利者である場合、請求金額が適切か否かを確認する必要があります。

  2. (2)遺留分侵害額請求の時効

    遺留分侵害額請求をされた場合には、遺留分侵害額請求権の時効が成立していないかどうかを確認する必要があります。

    遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から「1年間」行使しないときは、時効によって消滅します(民法第1048条1項)。また、相続開始の時から10年を経過した場合にも権利を行使することができません。

    以上より、遺留分侵害額請求をされた時点で、上記の1年を経過していた場合には、消滅時効によって権利が消滅していることを主張(時効の援用)できます。

    さらに、被相続人が亡くなってから10年が過ぎていれば、相続開始や遺留分侵害を知らなくても、遺留分侵害額請求権は消滅します。

  3. (3)相手方に特別受益がないか

    被相続人が、遺留分権利者に対して特別受益にあたる生前贈与をしている可能性があります。
    特別受益とは、すべての遺贈のほか、婚姻・養子縁組のためや生計の資本のための贈与を指します。このような特別受益にあたる贈与がある場合には、特別受益にあたる財産を相続財産に加えて法定相続分を計算し、そこから特別受益分を差し引いたものが具体的な相続分となります。

    このように特別受益の持ち戻しの計算を行うことで、相手方の請求金額を適切な金額まで引き下げられる可能性があります。

3、遺留分を請求されたときの流れ・対応方法

遺留分侵害額請求をされた場合、決して無視をしてはいけません。無視して適切に対応しない場合、大きなトラブルに発展してしまうおそれがあるからです。
ここでは、遺留分侵害額請求をされた場合の対応方法や手続きの流れを解説していきます。

  1. (1)内容に納得がいけば、請求に応じて支払う

    遺留分請求権者や、請求されている金額など内容に問題がなく、納得できる場合には、支払いに応じて早期に紛争を解決することも有効な選択肢です。

    ただし、相続財産に現預金が少ない場合には、すぐに請求に応じることが難しい可能性もあります。そのようなケースでは、分割支払いや支払期限の調整などを、相手方と交渉して決定する必要があるでしょう。

  2. (2)争う場合は、相手方と交渉・調停を行う

    相手方の請求を争う場合には、まずは話し合いや交渉を行うことになります。
    話し合いでも解決できない場合には、調停を行うことになります。
    調停は、調停委員会が当事者の間に入って話を聞きながら、合意を目指す手続きです。訴訟のように判決によって白黒をつけるのとは異なり、当事者の実情にあった柔軟な解決を目指すことができます。

  3. (3)調停が不調となれば、遺留分侵害額の請求訴訟

    調停が不成立になった場合には、遺留分侵害額の請求訴訟を提起することになります。
    訴訟手続きでは、当事者が証拠に基づいて主張・立証を行い、最終的には裁判官によって遺留分侵害額請求の可否を判断されます。
    判決による解決よりも和解による解決の方が、双方の互譲に基づくため、不利益は小さくなる可能性があります。さらに、裁判の場合には、最終的な解決までに1年以上時間がかかるケースも少なくありません。

4、遺留分を請求されたら弁護士へご相談を

遺留分侵害額の請求をされた場合には、すぐに弁護士に相談するようにしましょう
弁護士に相談することで、相手方が適切な金額で遺留分を請求してきているのか算定してもらうことができます。

また、相手方との話し合いや交渉についても、代理人として対応してくれるため、ご本人の手続き的な負担は相当軽減されるはずです。

さらに、任意の話し合いでは解決できず、調停手続きや裁判手続きに発展したとしても、弁護士に依頼しておけば、引き続き裁判対応を任せることができます。

そもそも、遺産である不動産を適正に評価したり、特別受益の存在を主張したりすることは、ご自身のみで対応することはなかなか難しいため、法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。

5、まとめ

遺留分とは、一部の相続人に認められた最低限の遺産の取り分のことです。
遺留分権利者から遺留分侵害額請求をされた場合には、決して無視してはいけません。
遺留分権利者かどうか、適切な遺留分侵害額かを確認したうえで、対処する必要があります。

遺留分を請求されてお困りの方や、相続問題でお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスには相続トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています