借金の連帯保証人が自己破産すると、家族の財産も差し押さえられるのか?
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家族や友人に頼まれて借金の連帯保証人になっている状態で主債務者が支払いを怠った場合には、連帯保証人であるご自身に借金の請求がなされます。
ご自身も返済が難しいときは債務整理を検討する必要がありますが、「自己破産してしまうと自分の家族の財産までもが差し押さえられてしまうのではないか」という不安を抱かれる方もいるでしょう。
本コラムでは、借金の連帯保証人が自己破産をしたときの家族への影響や、連帯保証人に請求がきたときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。
1、自己破産すると、家族の財産も差し押さえされる?
まず、自己破産と連帯保証人の関係について、基本的な事項を解説します。
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(1)自己破産をしても原則として家族には影響はない
自分が自己破産をした場合には、借金の返済義務が消滅する代わりに、一定以上の金額の財産を手放さなければなりません。
そのため、自己破産を検討している場合、「自己破産をすると家族の財産が差し押さえられてしまうのではないか」と不安を感じることもあるでしょう。
しかし、自己破産をしたとしても破産者の家族の財産が差し押さえられることは基本的にはありません。
借金の返済義務は、あくまで債権者と債務者との間の契約に基づいて発生するものであり、契約関係にない人はたとえ家族であったとしても支払いを強制させることはできないためです。 -
(2)家族が連帯保証人になっているケース
基本的には家族の財産が差し押さえられることはありませんが、ご自身の借金について家族が連帯保証人になっている場合には注意が必要です。
連帯保証人とは、債務者が借金の返済ができなくなったときに債務者に代わって借金の返済をする義務を負う人のことをいいます。
主債務者であるご自身が自己破産をすると、連帯保証人である家族に対して債権者が請求を行います。
したがって、連帯保証人である家族も返済できない場合には、家族名義の財産が差し押さえられてしまうことになるのです。 -
(3)自分が連帯保証人になっていて支払いができないケース
友人や知人に頼まれてご自身が連帯保証人になっている状態で、主債務者もご自身も支払いができない状態である場合にも、家族も同じ借金の連帯保証人になっているといった事情がない限り、家族の財産が差し押さえられることはありません。
ご自身は債務整理などの方法を検討する必要がありますが、基本的には家族に影響は生じないと考えてよいでしょう。
2、連帯保証人と保証人
連帯保証人と保証人は、いずれも主債務者の債務を保証するという点で共通しますが、以下のような相違点があります。
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(1)催告の抗弁権
「催告の抗弁権」とは、債権者が保証人に請求をしてきた際に、まずは債務者に催告するよう求めることができる権利です。
保証人には催告の抗弁権が認められているため、催告の抗弁権を行使することにより、弁済を拒むことができます。
しかし、連帯保証人には催告の抗弁権はありません。 -
(2)検索の抗弁権
「検索の抗弁権」とは、債権者が保証人に請求をしてきた際に、まずは債務者の財産に強制執行するよう求めることができる権利です。
検索の抗弁権を行使するためには、債務者に弁済する資力があることおよび執行が容易であることを証明する必要があります。
保証人には検索の抗弁権が認められていますので、上記の証明をすることで弁済を拒むことができますが、連帯保証人には検索の抗弁権がありません。 -
(3)分別の利益
分別の利益とは、保証人が数人いる場合に各保証人が負う債務が保証人の人数に応じて案分されることをいいます。
たとえば、300万円の債務について、保証人が二人いる場合には、各保証人は150万円の限度で返済をすればよいことになります。
保証人には分別の利益が認められているため、保証人が複数いるときの責任は限定されますが、連帯保証人には分別の利益はないため、連帯保証人が複数いたとしても各連帯保証人は全額の返済義務を負うことになります。
催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益が認められていないという点で、連帯保証人は保証人に比べて重い責任を負っているといえます。
3、連帯保証人に請求がきた場合の対処方法
以下では、債権者から連帯保証人に請求がきた場合にとることができる対処方法を解説します。
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(1)一括返済
債務者が返済を滞納すると、債権者は、連帯保証人に対して保証債務の履行を求めてきます。その際には、元金、利息、遅延損害金を含めた総額の一括返済を求められることになります。
連帯保証人に十分な資力がある場合や債務総額がそこまで多くないという場合には、債権者からの一括請求に応じて債務総額を一括で返済するという方法が考えられます。
一括返済は、債権者にとってもメリットが大きいことから、債権者との交渉により、利息や遅延損害金の減免措置を受けられる可能性があります。
すぐに支払ってしまうのではなく、まずは債権者との交渉で返済金額の負担軽減が可能であるか話し合ってみるとよいでしょう。 -
(2)分割払いの交渉
債権者からの一括請求に応じることができない場合には、債権者との交渉により分割での支払いを求めていくという方法があります。
分割払いが認められるかどうかは、あくまでも債権者次第ではありますが、連帯保証人の職業、年齢、収入、資産状況等によっては、分割払いに応じてくれる可能性もあります。 -
(3)債務整理の検討
一括払いおよび分割払いによる対応も難しいという場合には、債務整理を検討することになります。
債務整理の方法は、主に以下の三種類となります。① 任意整理
任意整理とは、債権者との話し合いにより、借金の返済負担軽減を図る方法です。
任意整理は自己破産や個人再生とは異なり裁判所を利用しない方法であるため、借金を大幅に減額できるとは限りませんが、債務整理の対象に含める債権を自由に選択できるというメリットがあります。
連帯保証人になる方は主債務者とは異なり自らが借金をしていたわけではないため、借金とは無縁で、比較的豊かな生活を送っている方多いでしょう。
住宅ローンや自動車ローンなども債務整理の対象に含めてしまうと生活に必要な自宅や車を失ってしまうおそれがありますが、任意整理であれば、それらを除外することで不利益を回避することができます。
② 自己破産
自己破産とは、裁判所から免責許可決定を得ることで、借金の支払い義務を免除してもらうことができる方法です。
基本的にはすべての借金をゼロにすることができるため、負担を大幅に軽減することができます。
ただし、自己破産をする際には、一定金額以上の財産があるときはすべて手放さなければなりません。
財産がある方にとってはデメリットが大きい手続きといえます。
③ 個人再生
個人再生とは、裁判所から再生計画案の認可を得ることで、借金を大幅に減額し、3~5年での分割払いにしてもらうことができる方法です。
個人再生では、自己破産とは異なり財産を処分する必要はないため、財産を手元に残しながら債務整理をしたいという方に向いている手続きといえます。
なお、個人再生をするためには安定した収入があることが要件になりますが、主債務者とは異なり連帯保証人になる方であればその要件を満たしている場合が多いでしょう。
4、債務整理で困ったら弁護士へ
借金の返済や保証債務のことでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)最適な債務整理の手段を提案してもらえる
債務整理の手続きは、主に任意整理・自己破産・個人再生の三種類となります。
それぞれ異なる特徴を有する手続きであり、メリットだけでなくデメリットも存在するため、それらをしっかりと理解したうえで手続きを選択することが大切です。
弁護士であれば債務整理に関する専門的な知識と経験に基づいて、債務整理が必要な方の状況に応じた最適な手段を提案することができます。 -
(2)連帯保証人として支払いを求められたときの対応をアドバイスしてもらえる
債権者から突然一括返済を求められると、連帯保証人の方としては、どのように対応すればよいか判断がつかないことも多いでしょう。
連帯保証人は債務者とは異なり借金と無縁に過ごしてきた方も多いため、ご自身がこれまでに築いた財産を守りながら連帯保証人としての義務を履行することが大切です。
よくわからないまま債権者の請求に応じてしまうと、大切な財産を失ってしまうおそれもあります。
まずは専門家である弁護士に相談して、今後の対応についてアドバイスを受けましょう。 -
(3)債権者や裁判所の対応を任せることができる
弁護士に依頼することには、債権者や裁判所の対応を任せられるというメリットもあります。
債権者への対応を弁護士に任せることで、債権者からの直接の督促をストップさせて、平穏な生活を取り戻すことができます。
また、自己破産や個人再生が必要になった場合には裁判所への申立てが必要になりますが、面倒な書類収集や複雑な申立書類の作成などをすべて弁護士に任せることができるため、ご自身の負担は大幅に軽減されるでしょう。
5、まとめ
借金の連帯保証人になってしまうと、主債務者が滞納などしたときに債権者から一括返済を求められてしまうリスクがあります。
連帯保証人の家族の財産が差し押さえられるということはありませんが、ご自身の財産の差し押さえを回避するためにも、早めに弁護士に相談することが大切です。
連帯保証人として返済を求められているという方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
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