任意整理で遅延損害金は免除できる? そもそも支払い義務はある?
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支払期日までの借金の返済ができず、支払いを滞納してしまうと、「遅延損害金」というペナルティが発生します。滞納期間が長くなればなるほど遅延損害金の金額は膨れ上がっていくため、早めに返済を行うことが大切です。
しかし、状況によっては現在の返済内容では借金の支払いを続けていくことが難しいこともあるでしょう。そのような場合には、任意整理を行うことによって、支払い条件の変更や遅延損害金の免除ができる可能性があります。
本コラムでは、遅延損害金の免除ができる可能性のある任意整理の手続きについて、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。
1、遅延損害金とは? 支払う義務はある?
まず、「遅延損害金」の概要を解説します。
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(1)遅延損害金とは?
遅延損害金とは、金銭債務の履行を遅滞したときの損害を賠償するために支払われるお金です。
借金の返済期日までに支払いができなかった場合、一定の利率で計算した遅延損害金が発生します。
遅延損害金は、「遅延利息」、「延滞利息」などとも呼ばれ、一種のペナルティとして機能しています。
遅延損害金は、法律上の支払いが義務付けられているお金であるため、借金の返済を遅延した場合には必ず支払わなければなりません。 -
(2)遅延損害金の利率は高い
遅延損害金は、お金を借りたときの利息よりも高い利率が設定されています。
利息制限法では、遅延損害金の上限金利が20%、消費者契約法では14.6%とされるなど一定の規制はあるものの、いずれにしても高い利率となっています。
また、遅延損害金は借金に関する本来の利息とは別途に発生するため、借金の返済を遅延した場合には、遅延損害金に加えて本来の利息も上乗せされることになります。 -
(3)遅延損害金はいつから発生するのか?
遅延損害金は、返済期日の翌日から発生し、以下のような計算式で計算をします。
遅延損害金=返済が遅れた金額×遅延損害金利率÷365日×延滞日数
たとえば、100万円の借金の返済を滞納して、遅延損害金利率が20%だった場合の遅延損害金は、以下のようになります。
- 30日の滞納の場合……100万円×20%÷365日×30日=1万6438円
- 60日の滞納の場合……100万円×20%÷365日×60日=3万2877円
このように滞納期間が長くなればなるほど、遅延損害金の金額は大きくなり、ますます返済が困難な状況になってしまうのです。
2、任意整理で遅延損害金は免除してもらえる?
以下では、任意整理で遅延損害金を免除してもらうことができるのかどうかについて解説します。
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(1)任意整理とは
任意整理とは、債権者との交渉により借金返済の負担軽減を図る債務整理の方法です。
任意整理には、自己破産や個人再生のように裁判所を利用する手続きではないことから、一部の債権者を除いて債務整理を行うことができるという特徴があります。
そのため、「お金を貸してくれた親だけには迷惑をかけたくない」といった希望がある場合には、特定の債権者(上記の例でいえばお金を貸してくれた親)を除いて任意整理を行うことができます。 -
(2)債権者との交渉で遅延損害金の免除に応じてくれる場合がある
任意整理は、債権者と交渉して遅延損害金や将来利息をカットしたうえで返済額を決め直す方法です。したがって、債権者が遅延損害金のカットに応じてくれた場合には遅延損害金は免除されます。
もし債務者が自己破産をしてしまうと、債権者としては、借金の回収が一切できなくなってしまいます。
そのため、利息や遅延損害金をカットすることで少しでも債務者が借金の返済をしてくれるなら、債権者にとってもそちらのほうが望ましいといえます。
したがって、状況によっては、債権者が遅延損害金の免除に応じてくれる場合があります。
3、任意整理が適している場合と不適な場合
任意整理を行えば遅延損害金を免除してもらえる可能性がありますが、債務者の状況によっては、任意整理以外の方法が適切なこともあります。
以下では、任意整理が適している場合と不適な場合について解説します。
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(1)任意整理が適している場合
以下のような場合には、任意整理が適しているといえます。
- ① 除外したい債権がある(例:保証人付きの借金がある)
任意整理では、特定の債権者を除外して手続きを進めることができます。
保証人付きの借金がある場合に、その借金の債務整理をしてしまうと債権者から保証人に対して請求がされてしまいます。
したがって、「保証人に迷惑をかけたくない」という場合には、保証人付きの借金を除外して手続きを進めるために、自己破産や個人再生ではなく任意整理を選択する必要があります。
- ② 家族や職場にバレたくない
自己破産や個人再生の手続きでは、家計の収支状況を明らかにしなければならないため、家族の協力が必要になります。
また、退職金の見込み額などを明らかにするために職場にも協力を求めなければなりません。したがって、家族や職場に債務整理をしていることがバレてしまうおそれがあります。
任意整理であれば、家族や職場に秘密にしたまま手続きを進めることができます。
- ③ 消費者金融の借金が多い
消費者金融は、任意整理により将来利息のカットや遅延損害金の免除に応じてもらえる可能性が高いです。したがって消費者金融からの借金が多い場合には、任意整理を行うことで借金の返済に関する負担を軽減しやすくなります。
- ④ 手放したくない財産がある
自己破産をすると、一定金額以上の資産はすべて手放さなければなりません。
自宅、車、保険、など手放したくない財産がある場合には任意整理の手続きが適しています。
- ① 除外したい債権がある(例:保証人付きの借金がある)
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(2)任意整理が適していない場合
以下のような場合には、任意整理ではなく他の方法で債務整理を行ったほうがよいといえます。
- ① 借金が高額
任意整理では、自己破産や個人再生のように大幅に借金を減免することはできません。債権者が分割での返済に応じてくれるとしても、少なくとも未返済の借金については返済しなければなりません。
したがって借金が高額である場合には、任意整理をしたとしても、依然として返済に苦しんでしまう可能性があります。
- ② 借金の金利が低い
任意整理をすれば、借金の将来利息をカットすることができます。
借金の金利の高い消費者金融が債権者の大部分を占めている場合には、将来利息をカットするだけでも、借金の負担をかなり軽減することができます。
しかし、銀行からの借入が主な場合には、そもそもの金利が低いため、任意整理をしても借金の負担はそれほど軽減することができません。
- ③ 減額しても借金の完済が難しい
任意整理は、借金の返済を行うことを前提とした債務整理の方法です。
遅延損害金の免除や将来利息のカットをしても借金の完済が難しいという場合には、自己破産や個人再生を検討する必要があります。
- ① 借金が高額
4、借金問題を弁護士に相談するべき理由
借金の問題でお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)状況に応じた最適な債務整理の方法を提案できる
債務整理には、任意整理以外にも自己破産や個人再生といった方法があります。
任意整理と同じように、自己破産や個人再生についても、状況によって適している場合と不適な場合があります。
どの方法が最適であるかは、ご自身の具体的な状況に照らして判断する必要があります。
弁護士に相談すれば、専門的な知識や経験に基づいたアドバイスを受けることができます。 -
(2)自分で債権者と交渉をするのは難しい
任意整理は、裁判所を利用しない手続きですが、債権者との交渉が必要になります。
そして、債務者自身が交渉しても、債権者が遅延損害金の免除や将来利息のカットに応じてくれない場合もあります。
弁護士に依頼すれば、債権者との交渉を代理してもらうことができます。 -
(3)弁護士が介入することで返済を一時的にストップできる
弁護士に債務整理を依頼すると、弁護士はまず各債権者に対して「受任通知」という書面を送付します。
そして、受任通知を受領した債権者は、債務者に直接に借金を取り立てることが法律で禁止されています。
債権者からの頻繁な督促や取り立てに悩んでいる方は、弁護士に依頼することで、催促や取り立てを一時的にストップすることができます。
平穏な環境で経済的再建に向けて取り組むことができるという点も、弁護士に債務整理を依頼することのメリットです。
5、まとめ
借金を滞納していると、「遅延損害金」というペナルティが発生します。
遅延損害金の利率は利息よりも高く設定されているため、滞納が長くなればなるほど遅延損害金の金額が膨らみ、借金返済が困難な状況になります。
そのような状況になる前に、早めに弁護士に相談しながら、適切な方法で債務整理を行うことが大切です。
借金でお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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