肉体関係がないのに慰謝料を請求されたら? 慰謝料が発生するケース

2024年12月23日
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肉体関係がないのに慰謝料を請求されたら? 慰謝料が発生するケース

令和4年度に東京都八王子市に寄せられた市民専門相談は5118件で、そのうち1591件が法律に関するものでした。

法律相談の中には、離婚や男女トラブルに関する相談が少なくありません。しかし不倫(不貞)などで肉体関係を持っていないにもかかわらず、慰謝料請求されてしまった場合はどうすればよいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。

出典:「統計八王子(令和5年〔2023年〕版)」(八王子市)


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1、肉体関係がないのに慰謝料請求されたら、応じるべき?

配偶者以外の異性と交際しているものの、まだ性的関係(肉体関係)はないという状況で慰謝料を請求されても、支払いに応じる義務はないケースが多いです。

不倫慰謝料が発生するのは、自分の行為が「不法行為」に該当する場合です。不法行為とは、故意または過失により、他人に対して違法に損害を与える行為をいいます(民法第709条)。

不倫について不法行為が認定されるのは、配偶者以外の異性と性的関係を持つ「不貞行為」をした場合が大半です。肉体関係がなければ不貞行為は認められないので、慰謝料は発生しない可能性が高いと考えられます

2、肉体関係がなくても慰謝料が発生する可能性があるケース

ただし以下に挙げるような場合には、不倫相手との間に肉体関係がなくても、不法行為が成立して慰謝料の支払義務が生じることがあるので注意が必要です。

  1. (1)不倫相手と同居していた場合

    自分が既婚者であるにもかかわらず、配偶者から離れて不倫相手と同居することは、特段の事情がない限り、肉体関係の有無にかかわらず、婚姻関係の破綻をもたらすものとして不法行為に当たりうると考えられます。
    また、既婚者であることを知っている不倫相手と同居することも、不倫相手の配偶者に対する不法行為に当たりえます。

  2. (2)不倫相手と結婚を前提に交際している場合

    肉体関係がないとしても、不倫相手と結婚を前提に交際している場合には、婚姻関係の破綻をもたらすものとして不法行為に該当しえます。
    たとえば、自分の配偶者や不倫相手の配偶者に対して、結婚前提の交際であることを明確に伝えていた場合には、不法行為に該当する可能性が高いでしょう。

  3. (3)不倫相手の配偶者に対して、別居や離婚を繰り返し要求した場合

    不倫相手と結婚したいがために、不倫相手の配偶者に対して別居や離婚を繰り返し要求した場合は、肉体関係の有無にかかわらず、不法行為に該当する可能性が高いと考えられます。
    婚姻関係を破綻に追い込む行為であるとともに、不倫相手の配偶者に不当な精神的ダメージを与える行為でもあるからです。

  4. (4)性行為に準ずる行為をした場合

    肉体関係(性行為)がなかったとしても、体を触り合うなどの性的接触行為をした場合は、不法行為が成立することがあります。
    肉体関係に近い関係性が認められる場合は、肉体関係がある場合と同様に、婚姻関係が破綻に追い込まれる可能性が高いからです。

  5. (5)非常識なほど高価なプレゼントをした場合

    配偶者以外の異性に対して非常識なほど高価なプレゼントをすることは、社会常識の範囲を逸脱するものとして、その他の事情と合わせ、配偶者に対する不法行為に該当する可能性があります。

    当事者の経済的状況などにもよりますが、当事者の経済状況から考えて常識の範囲を超えた高価なプレゼントや、数万円以上のプレゼントを繰り返し贈った場合には、その他の事情と合わせて不法行為が認められる可能性が高まるので注意が必要です。

  6. (6)不倫相手とふたりで旅行に行った場合

    既婚者であるにもかかわらず、配偶者以外の異性とふたりだけで旅行に行くことは、夫婦関係の平穏を乱すものとして不法行為に該当する可能性があります。

    同様に、相手が既婚者であることを知りながらふたりで旅行に行くことも、相手の配偶者に対する不法行為に当たることがあります。

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3、肉体関係がないのに慰謝料請求が認められた裁判例

既婚者と不倫相手の間の肉体関係が認定されなかったにもかかわらず、慰謝料請求が認められた裁判例を2つ紹介します。

  1. (1)相手が既婚者と知りながら同居|慰謝料300万円

    東京地裁平成27年5月27日判決では、相手の男性が既婚者であると知りながら約5年間同居した女性に対し、慰謝料300万円の支払いが命じられました。

    女性は、男性が性的不能の状態にあったため、性的交渉を行うことはできない旨などを主張し、不貞行為の存在を否定しました。

    しかし東京地裁は、仮に性的関係がなかったとしても、女性が既婚者である男性と同居生活を続けている以上、女性の行為は男性の妻に対する不法行為に当たると判示しました
    その上で、東京地裁は女性に対し、男性の妻に慰謝料300万円を支払うことを命じました。ただし、この判決の慰謝料金額については、男性の年収等、その他事情が事実上考慮された可能性がありますので、注意が必要です。

  2. (2)肉体関係がなくても結婚前提の交際|慰謝料70万円

    東京地裁平成17年11月15日判決では、既婚者である男性と結婚を前提として交際していた女性に対し、慰謝料70万円の支払いが命じられました。

    男性と女性の間の肉体関係は認定されませんでした。しかし、女性は男性の妻に対して、将来結婚を考えている関係である旨や、男性と早く離婚してほしい旨などを伝えました。
    また、男性も女性と一緒になりたい旨を述べて、妻がいる自宅に戻ることを拒否しました。その後、男性と妻の間で離婚調停が行われ、離婚が成立しました。

    東京地裁は、男性が既婚者であると知りながら交際を続けた行為や、周囲の説得を聞かず男性の妻に対して「結婚させてほしい」と懇願し続けた行為が、婚姻生活を破壊したものとして不法行為に当たると判示しました。

    その上で、東京地裁は女性に対し、男性の妻に慰謝料70万円を支払うことを命じました。

4、肉体関係がないのに慰謝料請求されたときの対処法

配偶者以外の異性との間に肉体関係がないのに、配偶者や不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたときは、以下の方法によって対処しましょう。

  1. (1)弁護士に相談して、不法行為の成否を検討する

    肉体関係がなければ慰謝料は発生しないケースが多いですが、性行為以外の行為を理由に不法行為が成立し、慰謝料が発生することもあります。

    慰謝料請求を受けたら、法的な観点から慰謝料が発生するかどうかを検討し、その結果を踏まえて対応することが大切です。不法行為が成立するかどうかにつき、弁護士のアドバイスを求めましょう。

  2. (2)損害賠償請求権の消滅時効を確認する

    不法行為が成立するとしても、以下のいずれかの期間が経過すると、損害賠償請求権が時効により消滅します(民法第724条)。

    • ① 損害および加害者を知ったときから3年
    • ② 不法行為のときから20年


    時効期間が経過していれば、時効を援用することによって慰謝料の支払いを免れることができます。慰謝料請求を受けたら、時効の状況を必ず確認しましょう。

  3. (3)示談書などの書面には、直ちにサインをしない

    相手方から示談書などの書面を提示されても、直ちにサインしてはいけません。請求の内容を確認し、支払う義務があるかどうかをきちんと検討してから、サインするかどうかを決めるべきです。

    提示された示談書などはサインせずに持ち帰り、サインすべきかどうかについて弁護士のアドバイスを受けましょう。

  4. (4)和解交渉をして解決を図る

    慰謝料を支払う義務があると思われる場合や、穏便に解決を図りたい場合は、相手との間で和解交渉を行いましょう。

    慰謝料の金額については、法的な観点から適正額を検討した上で、それに近い額で和解することが望ましいです。互いに適正と考える慰謝料の額を提示しながら、歩み寄って和解の成立を目指します。

    相手と合意できたら、その内容を記載した和解合意書を作成し、問題が解決したことを明確化しましょう

  5. (5)訴訟などを通じて解決を図る

    和解交渉がまとまらないときは、法的手続きを通じて解決を図るほかありません。

    離婚請求を伴う場合は離婚調停や離婚訴訟、慰謝料請求に限る場合は民事調停や民事訴訟の対象となります。慰謝料を請求される側は、相手方による調停申立てや訴訟提起を待って対応します。

    調停や訴訟などの法的手続きには、専門的かつ複雑な対応が求められます。弁護士を代理人として同席させ、臨機応変な対応ができるようにしておきましょう。

5、まとめ

肉体関係がないのに不倫慰謝料(不貞慰謝料)を請求されたら、対処法について弁護士にアドバイスを求めましょう

弁護士は、慰謝料の支払義務があるかどうかを法的な観点から検討した上で、不当な慰謝料請求に対しては適切に反論します。また、調停や訴訟などの法的手続きに発展した場合も、弁護士が代理人として対応し実務的な負担はもちろん、精神的な負担も軽減します。

ベリーベスト法律事務所は、離婚や男女問題に関するご相談を随時受け付けております。配偶者や不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されてしまった場合は、ご相談ください。男女トラブルの解決実績がある弁護士が親身になってご対応いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています