「子どもがいらない」と言う相手と離婚する方法を解説
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夫婦が離婚を考えるきっかけのひとつに、子どもをつくるかどうかという問題があります。自分が子どもを欲しいと思っていても、相手が「子どもはいらない」と思っており、双方の意見が衝突すれば、離婚を検討されることもあるかもしれません。
離婚自体は、相手の合意があれば可能です。しかし合意が得られない場合には、法律で定められた離婚事由に該当するかどうかがポイントとなります。
本コラムでは、「子どもはいらない」と言う相手と離婚する方法について、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。
1、子どもがいらないと思う配偶者の気持ちとは
夫婦のどちらかが「子どもはいらない」という気持ちを抱く理由としては、以下のようなものがあります。
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(1)経済的な理由
夫婦ふたりで生活していくのにも精一杯な状況だと、子どもにお金をかける経済的な余裕はありません。
そのような状況だと、子どもにやりたいことをやらせてあげられず、かわいそうな思いをさせてしまうと感じ、子どもを持つこともあきらめる方もいるでしょう。 -
(2)親として自信が持てない
過去に親から虐待やネグレクトを受けていた人やそこまでには至らないものの親子仲が悪かった人は、「子どものいる家庭」にネガティブなイメージを持つことがあります。
そのような環境で育った人は、自分が子どもの親になることに自信が持てず、子どもをつくることに消極的な気持ちになってしまうことがあるのです。 -
(3)キャリアを優先したい
女性の場合、子どもをつくるときに妊娠や出産というイベントは避けてとおることができません。
仕事をしている場合には、その期間は、仕事を休むまたは辞めなければならず、場合によってはこれまで築き上げたキャリアが失われてしまう可能性があります。
仕事を優先したいという女性の場合には、子どもはいらないと考える方もいるかもしれません。
2、子どもがいらないことは離婚事由にできるのか?
以下では、配偶者から「子どもはいらない」と言われたことが、離婚をする理由になるのかどうかについて解説します。
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(1)配偶者の合意があれば離婚できる
どのような離婚理由であったとしても、夫婦の双方が離婚に合意しているのであれば、離婚をすることができます。
そのため、離婚理由が「子どもはいらない」と言われたことであったとしても、そのような理由で離婚することにお互いが納得しているのであれば、話し合いでの離婚(協議離婚)を進めることができます。
したがって、「子どもはいらない」という配偶者に対して「子どもがいない婚姻生活は考えられない」と伝えたうえで、離婚の話し合いを進めていくとよいでしょう。 -
(2)合意が得られないときは法定離婚事由の有無がポイント
配偶者から離婚の合意が得られない場合には、最終的に、裁判所に離婚の可否を判断してもらうことになります。
その際には、「法定離婚事由」という法律で定められた事由に該当する事情があるかどうかが重要になります。
民法では以下の5つの事由を法定離婚事由と定めており、いずれかに該当する事情がなければ、裁判所が離婚を命じることはできないのです。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「子どもはいらない」と言われたことを理由に離婚するためには、上記の離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたることを主張していく必要があります。
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(3)どのような事情があれば法定離婚事由に該当する?
法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、夫婦間のさまざまな事情を総合考慮して判断するものであるため、夫婦間の具体的な事情によって離婚できるかどうかが変わってきます。
たとえば、配偶者から子どもはいらないと言われて、性交渉自体を拒否されている状況であれば、いわゆる「セックスレス」に該当することから「セックスレス」に合理的な理由がないと判断されれば、離婚が認められる可能性があります。 一方で、性交渉自体はあるものの必ず避妊をしているという場合には「セックスレス」を理由として離婚することはできません。
しかし、夫婦が性交渉をする目的には、「性的結合関係を強める」ことだけでなく「子どもをもうける」という目的もあります。
したがって、合理的な理由なく避妊を強要することも、具体的な事情によっては離婚事由に該当する可能性があるのです。
3、子どもがいらないことで離婚した場合に慰謝料は請求できるのか?
以下では、相手が「子どもはいらない」と主張したことが理由で離婚した場合に、相手に対して慰謝料請求をすることができるのかどうかについて解説します。
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(1)子作りの拒否が離婚事由に該当する場合には慰謝料請求が可能
「離婚をすれば常に慰謝料が請求できる」と考えている方もおられますが、実際にはそうではありません。
慰謝料請求をするためには、違法性、つまり配偶者に有責性があることが必要になるのです。
慰謝料請求ができる代表的なケースは配偶者による暴力や不貞行為ですが、正当な理由なく配偶者が性交渉を拒否していたり合理的な理由なく避妊を強要していたりしたような場合にも、慰謝料を請求できる可能性があります。 -
(2)慰謝料の相場はどのくらい?
慰謝料とは、精神的苦痛に対する金銭的な賠償です。
どの程度の精神的苦痛を受けたのかは具体的な事情によって異なるため、一概に判断することはできません。
一般的には、離婚慰謝料の金額は、以下のような事情を総合的に考慮して判断されます。- 相手の有責性の程度
- 精神的苦痛の程度
- 婚姻期間
- 未成熟子の存在
慰謝料金額の相場を知りたい場合には、まずは専門家である弁護士に相談してください。
4、子どもがいらない配偶者と離婚する流れ
「子どもがいらない」と主張する配偶者と離婚する場合には、以下のような流れで続きを進めていきましょう。
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(1)証拠を集める
「子どもがいらない」と言われた以外にも暴力や不貞行為などの離婚原因がある場合には、それを理由に離婚を進められる可能性があります。
そのため、他にも離婚原因がある場合には、それを裏付ける証拠をしっかりと確保してから話し合いを進めていきましょう。
証拠がない状態で離婚を切り出してしまうと、本来得られるはずだった証拠が処分されるリスクが生じる点に注意してください。 -
(2)協議離婚
夫婦といってもそもそも他人同士が結婚したにすぎませんので、お互いの価値観の相違が生じるのはやむを得ないといえます。
子どもをつくるかどうかで夫婦の意見が食い違い、お互いに譲歩ができないときは、まずは離婚に向けた話し合いを進めていきましょう。
お互いの話し合いの結果、離婚の合意に至った場合には、離婚届に記入して、それを市区町村役場の窓口に提出すれば離婚は成立します。
また、離婚以外にも慰謝料、財産分与などの離婚条件を定めたときは、口約束で済ませるのではなく、必ず離婚協議書を作成してください。 -
(3)離婚調停の申立て
夫婦の話し合いでは離婚の合意に至らないときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをします。離婚調停では、裁判所の調停委員が夫婦の間に入ってくれるため、お互いに顔を合わせる必要がなく、スムーズに話し合いを進めることができます。
当事者だけでは感情的になってしまい離婚の合意に至らないケースでも、第三者が関与する調停であれば、離婚の合意に至る可能性があるでしょう。 -
(4)離婚訴訟を提起
離婚調停でも離婚が成立しないときは、最終的に家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。
先述したとおり、裁判所に離婚を認めてもらうためには、民法が定める法定離婚事由が必要になります。
配偶者から「子どもがいらない」と言われたという事情だけでは、裁判所に離婚を認めてもらうことが難しいため、その他の事情も踏まえてしっかりと主張立証していくことが大切です。
裁判手続きは、非常に専門的かつ複雑な手続きであるため、ひとりで進めるのではなく専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくようにしましょう。
5、まとめ
子どもをつくるかどうかは、夫婦にとって非常に重要な問題であり、お互いの協力がなければ解決することができません。
お互いの意見が食い違い平行線をたどるような場合には、早めに離婚を決断することも必要になるでしょう。
ただし、子どもがいらないと言われたことを理由に離婚できるかどうかは、夫婦間の実情によって異なります。
まずは専門家である弁護士に相談して、今後の離婚の進め方についてアドバイスを受けるとよいでしょう。
離婚に関するお悩みをお持ちの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています