離婚の伝え方マニュアル|もめづらいベストな切り出し方と必要な準備
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配偶者へ離婚を切り出すことは、少なからず勇気がいるものです。そのため、離婚を決意しても、正直な気持ちをなかなか伝えられずにいる方もいるでしょう。
実際、いきなり配偶者に離婚を切り出すと、もめる可能性があります。伝えるべき内容やタイミングは、配偶者の性格など状況によって異なるため、慎重に検討すべきです。スムーズに離婚手続きを行うためにも、離婚の伝え方からしっかりと準備を整えましょう。
本コラムでは、もめるリスクを軽減する離婚の伝え方や、事前に準備しておきたい5つの項目について、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。


1、離婚を伝える前に|必ず行うべき準備5つ
配偶者へ離婚を伝える前に、まずは以下の5つの準備を行うようにしてください。
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(1)法定離婚事由の有無を確認
協議離婚や調停離婚であれば、夫婦双方が離婚に合意できれば、離婚の理由は問われません。そのため、どのような理由であっても離婚可能です。
しかし、相手が離婚に応じてくれない場合には、家庭裁判所での離婚調停を行い、それでも解決しない際は離婚裁判を起こすことになります。離婚裁判で離婚するためには、以下の5つの法定離婚事由が必要です。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続し難い重大な事由
配偶者が素直に離婚に応じてくれない場合に備えて、法定離婚事由に該当する事情があるかどうかも確認しましょう。 -
(2)離婚原因に関する証拠を集める
離婚協議や離婚調停で話がまとまらず、裁判離婚に移行する際は、法定離婚事由に該当する事情があったことを証明しなければなりません。そのためには、離婚原因を裏付ける証拠が必要になります。
また、配偶者から離婚の原因となるような行為(DV、不倫、モラハラなど)を受けていた場合、離婚とともに慰謝料の請求もできますが、その場合も証拠は不可欠です。
たとえば配偶者の不倫を証明するためには、不倫相手とホテルに入る様子の写真や、性行為があったことがわかるやり取りなどが証拠になります。どのようなものが証拠になるかわからない場合は、弁護士に相談することを検討しましょう。 -
(3)離婚条件を明確にする
離婚の話し合いでは、以下のような離婚条件も確認します。
- 子どもがいる場合、親権
- 子どもがいる場合、養育費
- 請求する場合、慰謝料
- 財産分与
- 子どもがいる場合、面会交流
- 年金分割
それぞれどのような希望があるか、明確にしておきましょう。ただし、すべての離婚条件を希望どおりに通すことは、難しいかもしれません。そのため、特にどの希望を通したいか、優先順位も決めておくと良いでしょう。 -
(4)財産を確認する
離婚時は、夫婦で築いた財産を分ける「財産分与」の請求が可能です。財産分与を請求するには、お互いにどのような財産を持っているかを開示し合う必要があります。
しかし、財産を確認する前に配偶者へ離婚を切り出すと、配偶者が自分の財産を隠そうとすることもあるでしょう。そのため、離婚を伝える前に、ある程度相手の財産を調べておくことが大切です。 -
(5)離婚後の生活の見通しを立てる
離婚後に自宅を出ていく予定なら、次の住まいを探しておきましょう。実家が近くにある方は、しばらく実家で生活することも選択肢になります。しかし実家を頼れない場合は、アパートなどを決めておかなければなりません。
特に子どもと出ていく方は、引っ越しに伴って子どもの転校が必要になることもあるため、転校先の手続きも忘れず行いましょう。
また、専業主婦の方の場合、離婚後は自分で生活費を稼ぐための仕事を見つけなければなりません。就職活動はある程度の時間がかかるため、早めに行動することが大切です。
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2、状況と相手の性格別|最適な伝え方とタイミング、場所
離婚の準備ができたら、配偶者への離婚の伝え方やタイミングを決めましょう。以下では、配偶者の性格などのケース別に、もめるリスクを軽減する離婚の切り出し方を紹介します。
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(1)DV被害を受けている
配偶者からDV被害を受けている場合、むやみに離婚を切り出すと暴力を振るわれるリスクがあります。そのため、離婚の伝え方やタイミングは慎重に見極めなければなりません。
① 冷静な相手
DVを行うとき以外は冷静な方であっても、離婚を伝えると感情的になり、暴力を振るう可能性があります。そのため、夫婦だけで話し合いをするのは避け、親や友人など第三者に同席してもらって離婚を伝えましょう。
② 感情的な相手
普段から感情的な方に対して離婚を伝えると、暴力を振るわれる可能性が非常に高いでしょう。離婚を切り出したことで、日ごろの暴力がエスカレートするリスクもあるため、離婚を伝えるタイミングは、別居をしたあとが良いかもしれません。
また、離婚については直接会って伝えるのではなく、メールやLINEなどの手段を使って間接的に伝えるようにしてください。 -
(2)モラハラ気質で威圧的な対応をされる
モラハラ気質のある方は、威圧的な態度をとり、自分の気に入らないことがあると無視したり、暴言を吐いたりするなどの行動をとることがあります。そのため、DV被害を受けている場合と同様に、離婚を切り出す際は慎重な対応が求められます。
① 冷静な相手
普段は冷静な方であれば、離婚を切り出しても、激しく罵倒されるなどの危険性は高くないでしょう。一方で、話を聞いてくれない可能性があります。話し合いに応じてもらえないと、夫婦だけでの話し合いは難しいため、親や友人に同席してもらうことを検討しましょう。
なお、弁護士に依頼すると、弁護士が配偶者との交渉を委任できるため、配偶者と会わずに離婚手続きを進めることができます。
② 感情的な相手
感情的な方は、離婚を伝えたことで激高し、大声で罵倒するなどのモラハラをする可能性があります。エスカレートするとDVに発展するリスクもあるため、夫婦だけでの話し合いは避けた方がよいでしょう。
配偶者が感情的になりやすい方の場合は、別居したタイミングで離婚を切り出してみてください。また、直接の話し合いではなく、メールやLINEなどの間接的な伝え方を検討しましょう。 -
(3)すでに別居をしている
すでに配偶者と別居していて、これから離婚を伝える方もいるでしょう。一緒に暮らしているときと比べて、別居中は配偶者と話す時間が減りがちです。離婚について伝える際は、まず話し合いの機会を設けてくれるか、聞いてみてください。
① 冷静な相手
配偶者が冷静な気質であれば、ある程度落ち着いて話し合いできる可能性があります。喫茶店やファミリーレストラン、どちらかの自宅などを利用して、離婚の話し合いを検討してみてください。
別居開始から長い時間が経過すると、わざわざ配偶者と時間を作って話し合うことが面倒になってしまうかもしれません。別居中に離婚を切り出す際は、なるべく早く話し合いの時間を設けましょう。
② 感情的な相手
配偶者が感情的になりやすい方の場合、自宅などで直接会って離婚を伝えると、夫婦げんかに発展するおそれがあります。喫茶店やファミリーレストランといった場所であれば、周囲の視線があるため、配偶者も落ち着いて話し合いを続けてくれる可能性が高まります。
なお、どちらかの自宅で話し合いをする場合は、親や友人などの同席してもらうことで、より冷静に話し合いを進めやすくなるでしょう。 -
(4)夫婦に子どもがいる
夫婦に子どもがいる場合、離婚の話し合いを子どもに聞かれてしまうと、子どもがショックを受けてしまうかもしれません。離婚を切り出す際は、極力子どもがいないタイミングを意識しましょう。
① 冷静な相手
配偶者が比較的冷静な方であれば、離婚の話し合いをするとなれば、子どもに聞かれるべきではないと理解してくれるはずです。そのため、「子どもがいないときに離婚の話し合いをしたい」などと伝えて、話し合いの時間をとってもらいましょう。
② 感情的な相手
感情的になりやすい方に離婚を切り出す際は、「子どもがいないときに離婚の話し合いをしたい」と伝えるだけでも相手が感情的になる可能性があります。そしてその場でけんかになり、結果として子どもの前で両親がもめる姿を見せてしまうかもしれません。
そのため、事前に子どもを実家に預けるなどして、子どもがいない状況にしてから離婚を伝えてみましょう。 -
(5)離婚理由が性格の不一致
性格の不一致や価値観の相違は、夫婦が離婚を考える主要な理由のひとつです。これを理由に離婚を提案したものの、話し合いが決裂した場合は離婚調停に進みます。しかし、性格の不一致は民法上の法定離婚事由には該当しないため、調停でも解決しなかった際、性格の不一致だけを理由に離婚裁判に進むことはできません。
性格の不一致を理由に離婚を伝えるなら、夫婦での話し合いや調停で離婚に合意を得られるよう、心がけましょう。① 冷静な相手
配偶者が普段から冷静な方であれば、落ち着いて話し合いできる可能性が高いでしょう。離婚をしたいことやその理由を正直に伝えてみてください。
② 感情的な相手
配偶者が感情的になりやすい方の場合、性格の不一致や価値観の相違を理由に離婚をしたいと伝えても、怒りながら言い返すなどして、簡単には納得してくれないかもしれません。そのため、性格が合わないと感じたエピソードを具体的に伝える、客観的な証拠を提示するなどの工夫が必要になります。
3、起こりがちなトラブルと避けるべき言動
以下では、離婚をする際に起こりがちなトラブルと避けるべき言動を説明します。
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(1)離婚の準備が整っていない段階で離婚を切り出す
まず、離婚の準備が整っていない段階で離婚について伝えることは避けましょう。
十分な準備ができていない状況で離婚を伝えると、離婚合意までに時間を要するだけではなく、配偶者が財産分与で本来開示すべき財産を隠してしまうおそれがあります。
すぐにでも離婚したい方もいるかもしれませんが、スムーズに合意を得るためにも、必要な準備ができてから離婚を伝えるようにしてください。 -
(2)離婚の話し合いで感情的になる
離婚について話し合う際は、結婚生活の不満や相手の嫌なところを指摘する機会も多く、感情的になってしまうこともあるでしょう。
しかし、感情的になって夫婦げんかに発展してしまうと、話し合いが進まず離婚への合意も遅くなってしまいます。自分から相手を挑発しないのは当然ですが、相手の挑発に乗ってしまわないように気を付けましょう。 -
(3)別居中に不倫をする
別居をしていても、離婚するまでは配偶者との婚姻関係が続いています。別居中に新しい恋人を見つけたとしても、肉体関係を持たないようにしましょう。
このような行為は、法定離婚事由の「不貞行為」に該当するため、配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。さらに、有責配偶者として、あなたから離婚を請求することが難しくなってしまいます。
納得できる条件で離婚するためにも、正式に離婚が成立するまでは、異性との交際は避けるのが賢明でしょう。 -
(4)勝手に別居をする
配偶者の同意なく勝手に別居をすると、法定離婚事由のひとつである「悪意の遺棄」に該当するリスクがあります。悪意の遺棄と認められると、あなたから離婚を請求できなくなるだけでなく、配偶者から慰謝料を請求されるリスクも生じてしまいます。
そのため、別居はあらかじめ配偶者の同意を得てから行うようにしてください。ただし、DVやモラハラ被害を受けている場合には、それを正当な理由として、配偶者の同意なく別居できる可能性があります。
4、スムーズな離婚を実現するために弁護士へ相談を
離婚には、事前に準備すべきことや決めなければならないことがたくさんあります。十分な準備をせずに離婚を切り出すと、有利な条件で離婚ができなくなるリスクがあります。
また、配偶者の性格や状況によっては、夫婦だけでの話し合いが困難なケースもあるでしょう。
スムーズに離婚をするためには、専門家である弁護士のアドバイスやサポートを受けることを検討しましょう。
弁護士に依頼をすれば、弁護士があなたの代理人として配偶者との交渉を行えます。そのため、離婚の話し合いにより生じる負担やストレスを大幅に軽減することができるでしょう。また、弁護士であれば、法的観点から適正な離婚条件を提案できるため、納得できない条件のまま離婚せざるを得ないリスクを回避できます。
自分で離婚を伝えるのが不安な際は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
5、まとめ
適切な離婚の伝え方は、状況や配偶者の性格によって異なります。自分の置かれた状況をよく確認し、離婚の準備を進めましょう。トラブルをなるべく回避しながら離婚を伝えるには、知識や経験が不可欠になるため、自分ひとりで対応できるかどうか自信がない場合には、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
離婚の伝え方など、離婚についての問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスまでお気軽にご相談ください。
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