単身赴任を理由に離婚できる? 50代が準備すべきことや離婚の流れ
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離婚の理由のひとつに、夫婦のコミュニケーション不足がありますが、単身赴任から会話不足に陥るケースも少なくありません。特に、50代の夫婦だと老後のことも考え始めますので、「このままこの人と一緒にいてもよいのだろうか」などと考えることもあると思います。
単身赴任をきっかけに離婚を決断した場合、まずはどのような準備をすればよいのでしょうか。また、そもそも単身赴任を理由に離婚はできるのでしょうか。
ベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。


1、単身赴任を理由に離婚できる? 法定離婚事由とは
そもそも単身赴任を理由に離婚はできるのでしょうか。
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(1)お互いに離婚に合意できれば離婚可能
離婚に至った理由が何であれ、夫婦の話し合いにより双方が離婚に合意できれば離婚することができます。
当事者同士で話し合って離婚することを「協議離婚」、裁判所の調停手続きで話し合って離婚することを「調停離婚」といいます。どちらであっても、互いに離婚に合意していれば離婚は可能です。
厚生労働省の人口動態調査「離婚の種類別にみた年次別離婚件数及び百分率(令和5年)」によると、約87%の夫婦が協議離婚、約7.5%が調停離婚をしています。 -
(2)離婚の合意が得られないときは法定離婚事由が必要
相手との話し合いでは離婚の合意が得られないときは、「裁判離婚」による離婚を目指すことになります。
裁判離婚は、夫婦の話し合いではなく裁判所に離婚の可否を判断してもらう手続きで、離婚を認めてもらうには、法定離婚事由が必要になります。
具体的には、主に以下が法定離婚事由にあたります。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 婚姻を継続し難い重大な事由
単身赴任は、上記法定離婚事由のいずれにも該当しませんので、単身赴任という理由だけでは裁判離婚はできません。
しかし、単身赴任をきっかけとして、以下のような事情があれば、法定離婚事由に該当し、離婚が認められる可能性があります。- 単身赴任中に配偶者以外の異性と不倫をした(不貞行為)
- 単身赴任をきっかけに生活費を入れてくれなくなった(悪意の遺棄)
- 単身赴任が終わっても自宅に戻らず長期間別居している(その他婚姻を継続し難い重大な事由)
このように、裁判離婚では、単に「単身赴任」という理由だけではなく、単身赴任をきっかけとしてどのようなことが起きたのかが重要なポイントになります。
2、単身赴任をきっかけに離婚するときの流れ
単身赴任をきっかけに離婚をする場合、以下のような流れで行います。
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(1)離婚に向けて準備すべきことを調べる
単身赴任をきっかけに離婚を決断したときは、いきなり配偶者に離婚したい旨を伝えるのではなく、事前に準備を行うことが大切です。
十分な準備をせずにいきなり離婚を切り出してしまうと、証拠を隠滅されるなどのリスクがあります。どのような準備が必要になるかは、人によって異なりますので、自分だけではよくわからないという場合には、離婚問題の実績が豊富な弁護士に相談するのも有効な方法です。 -
(2)配偶者の浮気などがあれば証拠を集める
配偶者が浮気をしている疑いがある場合には、浮気の証拠を集めましょう。
証拠により配偶者の浮気を立証できれば、法定離婚事由である「不貞行為」により、相手が離婚に同意しなくても、裁判で離婚することが可能です。
また、不貞行為は、慰謝料の請求の理由のひとつとなりますので、証拠により浮気を証明することができれば離婚時に慰謝料を請求することも可能です。SNSでのやり取りや写真、動画など、まずは証拠を確保するようにしましょう。
ただし、位置情報確認のために不正なアプリを入れたり、盗聴、盗撮をしたりすると違法行為になる恐れがあります。適切な証拠集めは、弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)夫婦で話し合う
離婚の準備や証拠収集ができたら、夫婦の話し合いで離婚を目指します。
話し合いでは感情的にならずに冷静に対応するのがポイントです。夫婦の話し合いで離婚の合意に至ったときは、その他の離婚条件の取り決めをして、その内容を離婚協議書にまとめておきましょう。
口頭での合意だけでは、後々トラブルになるリスクがありますので、必ず書面(離婚協議書や公正証書等)を作成することをおすすめします。 -
(4)話し合いで合意できなれば離婚調停へ進む
夫婦の話し合いで離婚の合意に至らなかったときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行います。
離婚調停も話し合いの手続きになりますが、調停委員という第三者が夫婦の話し合いに立ち合います。また、夫婦別々に調停委員と話すこともできるので、相手と顔を合わせたくない場合にも活用できる手続きです。
離婚の合意に至れば調停成立となり、合意内容が調停調書にまとめられます。調停調書には、確定判決と同様の効力があります。したがいまして、調停調書の中に相手方が慰謝料や養育費などのお金を支払う旨の定めがある場合、離婚後に万が一、相手がお金の支払いを怠ったとしても、裁判をすることなく直ちに強制執行することができます。 -
(5)調停が不成立の場合は離婚裁判を検討する
調停でも離婚の合意に至らなかったときは調停不成立となりますので、離婚訴訟の提起が必要になります。
ただし、協議離婚や調停離婚とは異なり、裁判離婚では法定離婚事由が必要になります。ご自身のケースで法定離婚事由に該当する事情があるかどうか、法定離婚事由を裏付ける証拠があるかどうかの検討が必要です。
お問い合わせください。
3、50代で離婚する前に知っておくべきお金のこと
50代で離婚をする場合、将来のお金に関して不安を抱く方も多いと思います。以下では、50代の夫婦が離婚する際に知っておくべきお金のことについて説明します。
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(1)財産分与
50代の夫婦だと婚姻期間も長くなりますので、婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産も多く存在すると思います。このような共有財産は、財産分与の対象になりますので、離婚時に財産分与を請求することで、原則として2分の1の割合で分けることができます。
財産分与は、離婚後の生活や老後の資金になりますので、相手の財産をしっかりと調べて適正な財産分与を行うことが大切です。相手が財産を隠している疑いがあるときは、弁護士に依頼して財産調査を行うとよいでしょう。 -
(2)年金分割
年金分割は、離婚した場合に、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。
50代の夫婦は、離婚をしたいと考えても老後の生活が不安で離婚に踏み切れないというケースも少なくありません。離婚時に年金分割を行うことで、将来の年金を増やすことができますので、老後の生活の不安も多少は解消されるでしょう。 -
(3)離婚後の生活設計
離婚をする際には、離婚後の生活設計を検討することが大切です。老後の資金や離婚後の住まいは、生活に直結する重要な事項ですので、できる限り明確にしてから、離婚を切り出すことをおすすめします。
特に、女性の場合は、離婚後自宅から出ていくケースが多く、離婚後の住まいを確保しておかなければ、住む場所がなくなってしまいます。また、専業主婦の方は、離婚後の収入を確保する必要がありますので、50代からでも働けるような仕事を早めに探すようにしましょう。 -
(4)養育費
夫婦に子どもがいる場合、子どもと一緒に生活する親は、相手に対して養育費を請求することができます。
しかし、50代の夫婦だと子どもが社会的・経済的に独立しているケースも多く、子どもの年齢や状況によっては、養育費が発生しない場合もあります。一般的には養育費は、子どもが20歳になるまで支払われますが、子どもが大学や専門学校に進学するような場合には、卒業まで支払われるケースもあります。
そのため、養育費の支払いをどうするかについても、夫婦でしっかりと話し合いって取り決めをしましょう。
4、50代の離婚で弁護士に相談すべき理由
以下のような理由から離婚をお考えの50代の方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)離婚後の生活面の不安について相談できる
50代の夫婦が離婚する場合、婚姻期間も長くなる傾向にあり、いわゆる熟年離婚と言われることも多いです。婚姻期間が長いほど、離婚によりそれまでの生活が一変してしまいますので、離婚後の生活面について不安を感じている方も少なくありません。
弁護士は、別居時の婚姻費用や不貞に対する慰謝料などを中心に、離婚後の生活を見通した請求のサポート・アドバイスが可能です。離婚後の不安が解消すれば、離婚に向けて前向きな気持ちになることができるはずです。 -
(2)50代の離婚は財産分与が高額になりやすい
50代の夫婦は、婚姻期間が長くなる傾向にあるため夫婦の共有財産も多く、財産分与が高額になりがちです。離婚後の生活の不安を解消するには、適正な財産分与を行うことが重要なポイントになります。
しかし、共有財産の種類や金額が多くなると、すべての財産を把握するのが難しく、財産の評価も複雑になりますので、知識や経験がなければ適正な財産分与を実現することは困難です。
離婚問題に実績がある弁護士であれば、財産分与の方法を提案し、50代の離婚の適正な財産分与についてサポートします。 -
(3)相手との交渉を任せられるため精神的な負担がほとんどない
50代の離婚は、相手と話さなければならない事項も多岐にわたります。
弁護士に依頼すれば相手との交渉を任せることができますので、精神的な負担も軽減されます。また、協議離婚で話し合いがまとまらなかったとしても、離婚調停や離婚裁判への移行もスムーズです。離婚をお考えの50代の方は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
5、まとめ
夫婦の話し合いが成立すれば、単身赴任を理由に離婚することができます。しかし、話し合いがまとまらない場合は、離婚裁判も視野に入れなければなりません。離婚できるかどうかは、法定離婚事由の有無が重要なポイントとなり、弁護士のサポートが重要になります。
話し合いの時点から相談にのってほしい、ご自身のケースで法定離婚事由に該当するものがあるかどうかわからない、という方は、財産分与や年金分割などの問題も含め、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。
離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が、お悩み・トラブルの解決に向けて尽力いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています