祖母の遺産分割は父死亡によってどうなる? 数次相続・代襲相続とは

2023年05月01日
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祖母の遺産分割は父死亡によってどうなる? 数次相続・代襲相続とは

八王子市役所が公表する「住民基本台帳 人口の増減」によると、令和3年の八王子市の出生者数は2988人でした。死亡者数は、過去最多の6017人となっています。

父方の祖母が亡くなった場合、本来であれば、祖母の子どもである父親が相続人です。しかし、祖母より先に父親が亡くなっているケースや、祖母の遺産分割協議中に父親が亡くなってしまうケースもあります。これらの場合、どのように遺産分割を行うべきなのでしょうか。

本コラムでは、父親が死亡しているケースを想定した祖母の遺産分割について、代襲相続・数次相続に関する取り扱いをベリーベスト法律事務所 八王子オフィスの弁護士が解説します。

1、「代襲相続」「数次相続」とは

亡くなった祖母の相続が発生する前後に父親が死亡した場合の遺産相続では、「代襲相続」または「数次相続」が問題となります。まずは、代襲相続と数次相続とは何かについて、基本的なポイントを確認しましょう。

  1. (1)代襲相続とは

    代襲相続とは、相続人が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合に、その子どもが相続人になることをいいます。代襲相続人の相続分は、被代襲者(相続権を失った人)と同等です。

    代襲相続が発生するのは、被相続人(亡くなった方)の子どもまたは兄弟姉妹が相続権を失った場合です。
    被相続人の子どもが相続権を失うときは、被相続人の孫が代襲相続人となり(民法第887条第2項)、被相続人の兄弟姉妹が相続権を失うときには、被相続人の甥・姪が代襲相続人となります(民法第889条第2項)。

    また、代襲相続人である被相続人の孫が相続権を失った場合は、さらにその子ども(被相続人のひ孫)による再代襲相続も認められています(民法第887条第3項)。

    なお、相続放棄によって相続権を失うケースに関しては、代襲相続が発生しない点にご注意ください。

  2. (2)数次相続とは

    数次相続とは、亡くなった家族(被相続人)の遺産分割が完了していない段階で相続人が死亡し、別の相続が始まることを意味します。

    たとえば、被相続人Aが死亡した後、遺産分割が終わっていないうちに、相続人である被相続人の子どもBが死亡してしまった場合は、数次相続の一種である「二次相続」が発生します。さらに、A・Bの遺産分割が終わっていないうちに、Bの配偶者Cが死亡した場合は「三次相続」が発生します。

    このように、数次相続が発生すると、複数の相続が二重・三重に積み重なるため、相続関係が非常に複雑化しやすいのが特徴です。

2、父死亡によって祖母の遺産分割に生じる影響

父親が死亡した(死亡している)ことで祖母の遺産分割に生じる影響は、父と祖母のどちらが先に亡くなったのかによって異なります。

  1. (1)父が祖母より先に死亡していた場合|代襲相続

    父親が祖母よりも前に死亡すると、代襲相続が発生します。父を代襲相続するのは、その子ども(ご自身とその兄弟)です。

    <設例1>
    • 祖母の相続人は伯父A、父B、叔母Cの3人
    • 父の子どもはD、E、Fの3人
    • 祖母よりも前に父が死亡し、その後に祖母も亡くなる


    設例1のケースでは、祖母の遺産相続について、伯父Aと叔母Cに加えて、父の子どもであるD・E・Fの3人が代襲相続人となります。つまり、祖母の遺産分割はA・C・D・E・Fの5人の間で行うことが必要です。

    代襲相続人であるD・E・Fは、もともと父が有していた祖母の法定相続分を分け合うことになります。したがって、祖母の相続に係る各相続人の法定相続分は、以下のとおりです。

    • 伯父A:3分の1
    • 叔母C:3分の1
    • 子どもD:9分の1
    • 子どもE:9分の1
    • 子どもF:9分の1
  2. (2)祖母の遺産分割協議中に父が死亡した場合|数次相続

    祖母が先に亡くなり、遺産分割協議中に父親が死亡すると、数次相続(二次相続)が発生します。父が有する祖母の相続権は、父の相続人が法定相続分に応じて相続することになります。

    <設例2>
    • 祖母が死亡、相続人は伯父A、父B、叔母Cの3人
    • 祖母の遺産分割協議中に、父Bが死亡
    • 父の子どもはD、E、Fの3人
    • 父には配偶者である母Gがいる


    設例2のケースでは、父が有した祖母の相続権を、父の相続人D・E・F・Gが承継します。つまり、祖母の遺産分割を行うのは、A・C・D・E・F・Gの6人です。

    相続人D・E・F・Gは、もともと父が有していた祖母の相続権を、法定相続分に従って分け合うことになります。したがって、祖母の相続に係る各相続人の法定相続分は以下のとおりです。

    • 伯父A:3分の1
    • 叔母C:3分の1
    • 子どもD:18分の1
    • 子どもE:18分の1
    • 子どもF:18分の1
    • 母G:6分の1

3、死亡した父が受取人になっている、祖母の生命保険の取り扱い

祖母の生命保険の受取人が父親になっており、その父親が死亡した場合には、死亡保険金請求権を誰が取得するかが問題となります。この場合、父親と祖母のどちらが先に亡くなっているのかは関係なく、死亡保険金請求権は父の相続人が取得します。

  1. (1)父が祖母より先に死亡していた場合

    生命保険の受取人である父親が、被保険者である祖母より先に亡くなっている場合、父親の相続人全員が死亡保険金の受取人となります(保険法第46条)。

    <設例3>
    • 祖母の相続人は伯父A、父B、叔母Cの3人
    • 祖母が亡くなる前に、父Bが死亡している
    • 父の子どもはD、E、Fの3人
    • 父には配偶者である母Gがいる


    設例3において、祖母の生命保険の受取人が父親になっていた場合、父親の相続D・E・F・Gが、法定相続分に応じて死亡保険金を受け取ることが可能です。

  2. (2)祖母の遺産分割協議中に父が死亡した場合

    祖母が亡くなった後、遺産分割協議中に父が死亡した場合には、父の死亡保険金請求権が相続の対象となります。

    <設例4>
    • 祖母が死亡、相続人は伯父A、父B、叔母Cの3人
    • 祖母の遺産分割協議中に、父Bが死亡
    • 父の子どもはD、E、Fの3人
    • 父には配偶者である母Gがいる


    設例4においても、設例3と同様に、父の相続人D・E・F・Gが、法定相続分に応じて死亡保険金を受け取ることが可能です。

4、複雑な相続問題は弁護士に相談を|弁護士に相談するメリット

代襲相続や数次相続が問題になるなど、複雑な相続が発生した場合には、弁護士へのご相談をおすすめいたします。

<弁護士に相談する4つのメリット>
  • 相続人・相続財産の調査を適切に行える
  • 遺産分割協議の調整を依頼できる
  • 遺産分割調停・審判の対応も一任できる
  • スケジュールを立てて着実に相続手続きを進められる


  1. (1)相続人・相続財産の調査を適切に行える

    弁護士は、遺産分割を行う前提として、相続人と相続財産の調査を慎重に行います。

    特に、代襲相続や数次相続によって相続関係が複雑になっている場合は、さらにトラブルを招かないためにも、弁護士に相続人調査をご依頼いただくのが安心です。

  2. (2)遺産分割協議の調整を依頼できる

    代襲相続や数次相続などの複雑な相続関係が生じた場合には、疎遠な親族同士が遺産分割協議を行うことにより、トラブルになるケースもあるでしょう。

    弁護士は、円滑に遺産分割協議をまとめられるように、各相続人の意見を丁寧に聴き取った上で調整を行います。弁護士が客観的な立場から調整することで、スムーズに遺産分割協議書を締結できる可能性が高くなります。

  3. (3)遺産分割調停・審判の対応も一任できる

    遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停・審判によって解決を目指すことになります。いずれも家庭裁判所で行われる手続きで、準備や期日対応に多大な労力がかかるものです。

    弁護士にご依頼いただければ、遺産分割調停・審判の対応を行うことができます。依頼者の方がご自身で対応される場合と比較して、依頼者の方の負担を大幅に軽減しつつ、各手続きを通じて公正な条件による遺産分割を行うことが可能です。

  4. (4)スケジュールを立てて着実に相続手続きを進められる

    相続放棄や相続税申告など、相続手続きの中には期限があるものも含まれるため、計画的に手続きを進めることが大切です。しかし、複雑な相続問題の解決には時間がかかってしまうことがよくあります。

    弁護士にご依頼いただければ、各手続きの期限を踏まえつつ、スケジュールを立てて着実に相続手続きを進行することが可能です。遺産分割協議が長引くとしても、期限のある手続きに影響が出ないように、工夫しながらご対応いたします。

    複雑な相続問題について、トラブルの発生・深刻化を防ぐためには、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

祖母が亡くなった場合の遺産分割において、相続人であった父親も亡くなっている場合には、代襲相続や数次相続に伴う複雑な対応が必要になります。相続関係が複雑になるほど、相続トラブルのリスクは高くなるため、弁護士へのご依頼がおすすめです。

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。複雑な相続問題についても、論点を整理し、スケジュールを立てた上で、早期に適切な形で解決できるようにサポートいたします。

複雑な遺産相続の対応は、ぜひベリーベスト法律事務所 八王子オフィスにお任せください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています